この法門出現せば、正法・像法に論師・人師の申せし法門は、皆、日出て後の星の光、巧匠の後に拙きを知るなるべし。この時には、正像の寺堂の仏像・僧等の霊験は皆きえうせて、ただこの大法のみ一閻浮提に流布すべしとみえて候。各々はかかる法門にちぎり有る人なれば、たのもしとおぼすべし。
この法門が出現するならば、正法時代や像法時代に論師や人師が説いた法門は、どれも、日が出た後の星の光のようなものであり、名匠が出た後に拙さが分かるようになるだろう。この時には、正法・像法の寺院の建物にある仏像や僧たちの利益は全て消え失せて、ただこの大法だけが全世界に流布するであろうと説かれている。あなた方は、このような法門に縁ある人なのだから、頼もしく思いなさい。
背景と大意
今回学びます三沢抄は、大聖人が57歳の時に身延の地で著されたお手紙です。
お手紙を受け取ったのは、静岡県に住んでいた、三沢小次郎という人物でした。
この三沢殿は、生まれは淡路島、後々、駿河の国の富士郡三沢の地の領主として移り住んだとされています。
本抄によると、この頃、三沢殿と大聖人とは音信が途絶えがちだったようです。
それは駿河の地が、鎌倉幕府にとって交通・軍事の要所であり、幕府直轄の地が多く置かれていたところという、地域特有の事情があったからです。
三沢殿は、領主という立場であるが故に、幕府から警戒されていた大聖人一門と頻繁にやり取りができる状況になかったと考えられます。
実際に、いただいた御手紙も少なく、三沢殿宛てのお手紙はこれまでにたった2編しか伝えられていません。
大聖人が、三沢殿が幕府から迫害されないようにと、細心の御配慮をされていたのです。
しかし、久しく音信が途絶えていた三沢殿から使いがあり、大聖人は、この機会に、三沢殿の信心を深めるために、本抄を認められたと拝することができます。
本抄は別名を「佐前佐後抄」とも言われています。
日蓮大聖人が説かれた法門について、大聖人が佐渡へ流罪された以前と、それ以後の法門では違いがあることを明かされ、佐渡流罪後に、真実の法門を明かしたと述べられます。
実際、大聖人が佐渡で人本尊開顕書と法本尊開顕書を著された意義はあまりにも大きい。
なぜならば、大聖人御自身が、実質的に末法の教主であることを明かされ、そして事実として万民を救済しうる大法を打ち建てたからです。
今回拝読する御文は、この「佐前佐後」の原理を示された重要な一節となっています。
解説
始めに「この法門出現せば、正法・像法に論師・人師の申せし法門は、皆、日出て後の星の光、巧匠の後に拙きを知るなるべし」とあります。
開目抄、観心本尊抄を著された以降の日蓮大聖人の法門は、まさに闇を破る、太陽の仏法です。
「南無妙法蓮華経」という大法の出現によって、世界中の全民衆を平等に光で照らすことができる。
それは、これまでの仏教の考え方を覆してしまう、偉大な大転換でした。
この大転換が起こった後に、過去の法門に力がないのは当然です。
例えるなら、インフルエンザにはすでに特効薬がありますが、絶対に効くと決まっている特効薬が出た後に、効くか効かないかわからないけど、みんなが飲んでいるらしいという、怪しい薬を飲むことはありえません。
大聖人の仏法が出現した以上、気休め程度の幸せになれるかなれないかよくわからない信仰に、あえてすがる必要はないのです。
続く御文に「この時には、正像の寺堂の仏像・僧等の霊験は皆きえうせて、ただこの大法のみ一閻浮提に流布すべしとみえて候」とあります。
「ただこの大法のみ」との仰せから、「南無妙法蓮華経」こそが全世界に広宣流布するとの大聖人の確信を感じます。
またもう一方の意味では、この大法を絶対に広宣流布していくんだという激励と受け止めることもできるのではないでしょうか。
間違った薬、効き目が弱い薬を使う人がいたら、丁寧に本当の特効薬を伝えていく。
この広宣流布の活動こそが、私たち創価学会員の使命です。
最後に「各々はかかる法門にちぎり有る人なれば、たのもしとおぼすべし」とあります。
大聖人は「私とともに戦ってきたあなた方こそ、この大法に縁ある人たちであり、頼もしく思っていきなさい」との一節で、この段を結ばれています。
どこまでも門下のため、門下を思っての励ましと拝察されます。
まさに、私たちが信仰しているのは、深い闇を打ち破る太陽の信心です。
全民衆を救済する最高の大法です。
これほど頼もしいことはありません。
池田先生は次のようにつづっています。
「日蓮大聖人の仏法は、全世界を尽未来際まで照らしゆく『太陽の仏法』である。いかなる時代の困難をも乗り越える無限の希望の力がある。我らは、この大法に『ちぎり有る』深き宿縁と使命を持って生まれた。広布の『法旗』を握りしめ、堂々と、賑やかに勝利のの道を歩み抜こう。世界の友と」
まとめ
世界では戦争が起き、突如として災害が起こり、残虐な事件も度々有るという、闇が一層濃くなったかのような時代です。
その一方で、この闇をうちはらうべく、創価の陣列は世界192カ国地域に広がっています。
太陽の仏法は、世界を照らす。
そして、私たち一人一人が太陽となっていくことができます。
「世界青年学会 飛翔の年」を明るく照らすのは私たちです。
共々に、地域の友とスクラムを組んで、「ああ、たのもし」と世界広布の大道を歩んでまいりましょう。