座談会御書講義

座談会御書「報恩抄」講義(2023年10月度)

日本乃至漢土・月氏・一閻浮提に、人ごとに有智・無智をきらわず一同に他事をすてて南無妙法蓮華経と唱うべし。このこといまだひろまらず。一閻浮提の内に仏の滅後二千二百二十五年が間、一人も唱えず。日蓮一人、南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経等と声もおしまず唱うるなり。

日本から中国・インド・全世界に至るまで、誰であれ仏法の智慧の有無に関係なく、皆、同じく他のことに構わずに南無妙法蓮華経と唱えるべきである。このことはまだ広まっていない。全世界の中で、釈尊が亡くなってから二千二百二十五年の間、一人も唱えていない。日蓮一人だけが、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経と、声も惜しまず唱えているのである。

背景と大意

今回、みなさんと学んでまいります「報恩抄」は、大聖人が仏教を学んだ時の師匠に当たる人が亡くられたと聞いて、そのお墓の前で読むようにと、兄弟子たちに託された御書です。

日蓮大聖人は12歳で、清澄寺というお寺に入られて教育を受け、16歳の時に出家されます。

その時の師匠を道善房と言います。

大聖人はその後、日本中のあちこちで仏法を深く学んで、清澄寺に帰り、32歳の時に立宗宣言をされます。

立宗宣言とは、要するに南無妙法蓮華経こそ、すべての人を幸せにする根本であると、宣言することです。

当時、清澄寺の一帯は念仏の信者が地域を治めていたため、その宣言をすること自体が実はとても危険なことでした。

実際、道善房は、大聖人をかばいきることができません。

それでも、師匠・道善房に対し、大聖人が恩をお忘れになったことはありません。

その報恩の思いをぎゅうぎゅうに込めて書かれたのが本抄です。

兄弟子たちに師匠の墓前で読むようにと託した御書ですが、御書全集にして37ページ分という膨大な量なので、兄弟子たちはなかなか大変だったと思いますが、それだけ恩に報いるということを重要視されていたものと拝されます。

では大聖人は、この長大な報恩抄で何を一番仰せになりたかったのか。

それは、南無妙法蓮華経こそが、世界中に広がって永遠に人々を救っていくという、最高・最強の教えであるという一点です。

その南無妙法蓮華経をただ一人、弘めてきたのが、日蓮大聖人です。

もちろん、その功徳は計り知れないものに違いありませんが、その功徳の行き先が「報恩」であるというのが、師匠を思う大聖人のお気持ちだったのではないでしょうか。

大聖人は、本抄の冒頭に、人として生きる道は「報恩」にある、と示されました。

また、本抄の末尾には、「花は根にかえり、果実は土にとどまる」という趣旨のお言葉を記され、大聖人が大難に遭いながら法華経を弘めた功徳も、亡くなった道善房に集まるだろうとの仰せです。

事実、道善房は、最後まで日蓮大聖人の仏法に従うことはありませんでしたが、それでもなお、大聖人の功徳が道善房を成仏させるとのご確信です。

師匠と弟子の関係の重要性、そして大聖人から創価学会によって現代に引き継がれた「一人立つ精神」を共々に学んでまいりましょう。

解説

 はじめに「日本乃至漢土・月氏・一閻浮提に」とあります。

漢土というのは中国で、月氏というのはインド、一閻浮提は全世界です。

これは、国や地域が違ったとしても全世界どこでも、という意味です。

続いて「人ごとに有智・無智をきらわず」とあるのは、仏法についての智慧があるとかないとか、なんら分け隔てなく、誰であろうと、という意味です。

国や地域の差を超えて、個人個人の差をも全て超えて、「一同に他事をすてて南無妙法蓮華経と唱うべし」と仰せの通り、南無妙法蓮華経は、すべての人を救うことができるのです。

特に「他事をすてて」と仰せのように、南無妙法蓮華経と唱えること以外に、全世界の人が分け隔てなく幸せになれる道はありません。

このこといまだひろまらず。一閻浮提の内に仏の滅後二千二百二十五年が間、一人も唱えず」との仰せは、日蓮大聖人が初めてすべての人を救うことのできるお題目をお示しになられたことを表しています。

さらに「日蓮一人、南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経等と声もおしまず唱うるなり」との仰せの通り、大聖人は命をおわれるような大変に厳しい状況を何度もむかえながらも、それでも「一人立つ精神」で、命懸けで戦ってこられたのです。

立宗宣言より後の日蓮大聖人は、まさに「声もおしまず」一日もたゆむことなく、南無妙法蓮華経を広められたと言えるでしょう。

この大聖人一人が唱えはじめたお題目が、創価学会の三代会長による「声もおしまず」の戦いによって、今や世界192ヶ国・地域にまで広まりました。

それはまさに「一人立つ精神」が、師匠から弟子へと、脈々と繋がってきた歴史です。

そしてその最前線にいるのが、私たちなのです。

池田先生はつづられています。

「大聖人がただ御一人から開始された、この末法広宣流布の大闘争を、現代に正しく受け継いでいるのは誰か。我ら創価の友以外には、絶対におりません。戸田先生は、関西の天地で獅子吼なされました。『百年の大計、いな、何千年の平和の大計を立て、もって、日蓮大聖人様の御恩に報ずるとともに、民衆万年の幸福を確立することが、創価学会の使命である』この師の心を、わが心に炎の如く燃えたぎらせて、人間の中へ飛び込んでいく。そして一人また一人と、信念の対話を繰り広げる。これが学会精神です」

まとめ

私たちは、大聖人から受け継いだ「一人立つ精神」の担い手であり、広宣流布の主体者です。

全世界を救いゆく自覚と、師匠への報恩を胸に、自他共の幸福を目指して、同志や友人と肩を組みながら、堂々と、創価の道を歩んでまいりましょう。

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